「この資産で、何歳まで暮らせるのか」。予定外にFIREを考えることになった私は、感覚だけで判断するのが怖くなり、自分でシミュレーターを作りました。
このページでは、Noteに書いた体験をもとに、FIREシミュレーターの考え方と、試算を通じて見えたことを整理します。目的は、将来を言い当てることではありません。前提を変えたときに、結果がどのくらい動くのかを知ることです。
先に自分の数字で試したい方はこちら
FIREシミュレーターを試す予定外のFIREを、感覚だけで決めない
私は昨年、勤めていた会社を年末に退職しました。いろいろな事情があり、もう続けるのは難しいと思ったからです。それなりの資産はありましたし、とりあえず転職できるだろう、最悪の場合は引退でもいい。最初はそう考えていました。
ところが、50代の転職は思っていた以上に厳しいものでした。書類で落ちることが多く、50社以上に応募して、面接に進んだのは数社。内定は一社だけでした。働き続ける前提で作っていた予定が、目の前で変わっていきました。
資産に対して年5%の運用ができれば、年間支出は賄える。頭の中ではそう計算できます。でも、これは人生がかかった判断です。ざっくりした計算だけで「大丈夫」と決めるには、あまりにも不安が残りました。
最初の試算で見えた、破産確率24%
そこで、引退時の資産、年間支出、引退年齢を入力して、何千通りものリターンを試す簡単なシミュレーターを作りました。試しに、引退時資産1億円、年間支出400万円というケースを入れてみると、破産確率は24%と表示されました。
この数字は、私の資産が1億円という意味ではありません。あくまで計算例です。それでも、「平均5%で運用できれば、毎年の支出を払っても残る」という頭の計算とは、ずいぶん違う印象でした。
数字を一つに決めて安心するのではなく、どの前提で結果が変わるのかを見る。私が欲しかったのは、そのための可視化でした。
シミュレーターは、何を計算しているのか
このシミュレーターでは、毎年のリターンをランダムに発生させ、引退から100歳までの資産推移を何度も計算します。資産が0円になった経路を「破産」と数え、全体に占める割合を破産確率として表示します。現在の設定では、3000本の人生を作るイメージです。
リターンは完全なでたらめではありません。中央値5%、標準偏差20%の対数正規分布を使い、株式の下落は-100%を下限にしています。現実にあり得る幅を意識した前提ですが、どの数字を採用するかで結果は変わります。
だから、表示された確率を「将来の確率」と受け取ってはいけません。これは入力した前提に対する試算です。未来を予測する道具ではなく、心配しているポイントを分解する道具です。
保守シナリオ・S&P実績ベース・カスタムを使い分ける
このツールには、3つの運用シナリオがあります。どれか一つを「正解」として選ぶのではなく、役割の違う3つの見方を並べるために用意しています。
年間リターンの中央値5%、ばらつき約20%です。S&P500の過去実績をそのまま将来に当てはめず、為替変動、インフレ、将来の不確実性を考慮して、期待リターンを控えめに置いた初期設定です。生活費を取り崩す計画では、まずこのシナリオで資産寿命を確認します。
S&P500の2000年〜2024年のドル建て・配当込みの実績から、年間リターンの中央値(幾何平均)7.7%、ばらつき約19%を導出しています。過去25年を振り返る基準にはなりますが、同じ実績が将来も続く保証ではありません。保守シナリオだけでは厳しすぎると感じたときに、歴史的な実績との距離を確かめるために使います。
年間リターンの中央値とばらつきを、自分の資産配分や運用方針に合わせて入力します。株式と債券を組み合わせたポートフォリオ、運用コストを差し引いた想定、取り崩し期に期待する控えめな前提などを試せます。数字の根拠を説明できる範囲で設定することが大切です。
将来計画の土台は保守的に置く。ただし、結果が厳しいからといって、最も悲観的な数字だけを答えにしない。S&P実績ベースとカスタムシナリオも並べ、現実的な幅の中で判断します。
おすすめの見方は、最初に保守シナリオで「この条件でも生活が続くか」を確認し、次にS&P実績ベースで「過去の長期実績と比べてどの程度の差があるか」を見ることです。最後に、自分の資産配分や支出計画に合わせたカスタムシナリオを置きます。
重要なのは、結果を見てから都合のよいシナリオを選ぶことではありません。3つの前提を先に決めて、結果の幅を比べることです。保守シナリオが厳しいときは、支出、引退年齢、資産配分を見直すきっかけになります。一方で、悲観に寄せすぎて「何をしても無理」と考えてしまうと、計画そのものが動かなくなります。
現実的な計画には、下振れへの備えと、実績に基づく見通しの両方が必要です。悲観的であること自体が目的ではなく、実行できる判断にたどり着くことが目的です。
平均リターンだけでは見えない、順番のリスク
FIREで特に気をつけたいのが、シークエンス・オブ・リターン・リスクです。平均リターンが同じでも、上昇と下落の順番が違うだけで、引退後の資産は大きく変わります。
資産1億円から年間600万円を取り崩す例で、上昇が前半に来るケースでは10年後に4258万円が残りました。一方、下落が前半に来るケースでは、最後に大きく上昇しても途中で資産が尽きました。
取り崩し中に大きな下落が来ると、安くなった資産を売って生活費を用意することになります。その後に相場が戻っても、戻る前に売った分は戻りません。平均値だけを見ていると、この順番の違いを見落とします。
100歳だけでなく、途中の年齢も見る
このシミュレーターでは、100歳時点だけでなく、60歳時点や75歳時点の破産確率も確認できるようにしました。100歳までの数字だけを見ると、とても怖く感じます。しかし、途中の年齢を区切って見ると、どの時点から危険が大きくなるのかが分かります。
これは安心材料を作るためではありません。長生きリスクを一つの数字に押し込めず、時間の経過に沿って分解するためです。引退年齢、年間支出、資産配分を変えながら、どの条件に自分が敏感なのかを確かめます。
株式と債券を比べて、生活の余白を考える
FIREというと、できるだけ高いリターンを目指す話になりがちです。私も最初は、年5%で運用できるか、さらに上振れを狙えるかを気にしていました。
しかし、シミュレーターで株式中心と債券中心を比べてみると、見方が変わりました。債券の利回りだけでは支出をすべて賄えない設定でも、資産を少しずつ取り崩しながら90歳以降まで生存する経路がありました。これは私の入力条件での結果であり、誰にでも当てはまる答えではありません。
大切なのは、最大リターンを取りに行けるかではなく、どの程度の生活を、どの程度の確かさで続けたいかです。70%くらい満足できる生活を確実に送るのか、上振れを求めて変動を受け入れるのか。数字は、その選択を考える材料になります。
数字は、答えではなく判断材料
シミュレーターを作る前、私は「これだけ資産があれば引退できるだろう」と考えていました。4%ルールも知っていましたが、リターンの順番が結果を変えることは、実感できていませんでした。
実際に数字を動かしてみると、怖さの正体が少し見えました。引退直後に下落が来たらどうなるのか。支出を少し下げたらどうなるのか。引退を数年遅らせたらどうなるのか。資産配分を変えると、どこが変わるのか。
結果を見て、すぐにFIREを決める必要はありません。むしろ、決める前に「自分は何を前提にしているのか」を確認することが大切です。試算で不安が増えることもありますが、知らないまま進むより、判断できる材料が増えた状態の方がいいと私は思います。
引退時の資産・年間支出・年齢を入力して、前提ごとの違いを比べてみてください。
FIREシミュレーターで試算するよくある質問
FIREシミュレーターは何を計算しますか?
引退時の資産、年間支出、引退年齢などの前提を使い、複数のリターン経路を試して、資産が途中で0円になる割合や資産残高の幅を試算します。
シミュレーターの結果は未来の予測ですか?
いいえ。入力した前提に基づく簡易試算です。将来の運用結果やFIREの可否を保証するものではありません。
試算にはどんな数字が必要ですか?
引退時の資産、年間支出、引退年齢を基本に、画面で選べる資産配分などを入力します。概算値で試し、前提を変えて結果の幅を比べます。
このシミュレーターと記事は、前提条件に基づく簡易的な試算と個人的な体験の共有です。インフレや税金など、すべての要素を考慮しているわけではありません。個別の投資判断、資産配分、FIREの可否を助言するものではありません。
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